土屋酒造店


五郎兵衛新田 | 金紋錦 ひとごこち
  

最高品質のコシヒカリ「五郎兵衛米」

コシヒカリの最高品質ブランドといえば、新潟県魚沼産が広く知られていますが、それを超えるとされるのが佐久市の「五郎兵衛米」です。五郎兵衛米とは、五郎兵衛用水の水を使用して栽培されるコシヒカリのことを指します。今から370年前、市川五郎兵衛真親(いちかわごろうべえさねちか)が北佐久郡浅科村の水田開発のために自らの財産を投じて用水路を築いたことから始まります。この用水路は「五郎兵衛用水」と名付けられ、蓼科山の湧き水を引いて育てた米が美味しいと評判となり、「五郎兵衛米」と呼ばれるようになりました。このブランド力のある五郎兵衛地区で、コシヒカリと酒造好適米を育てているのが、ファーム中鶴の丸山和則さんです。

酒造好適米は先代の酒好きが高じて始めました。栽培方法は先代が試行錯誤しながら進めてきましたが、毎年天候も違えば苗の状態も違います。状態を見ながら肥料を調節しますが、それは定点観察でしかないと考え、土壌分析も取り入れるようになりました。データを元に、気候に合わせて栽培方法を調整し、倒伏しやすいなどの酒造好適米のデメリットを解消しながら育てられるようになりましたが、コシヒカリと酒造好適米を同時に栽培する場合に発生する課題解決に困難をきわめました。米は収穫するまでの温度が重要で、生育期の積算温度、つまり毎日の温度を足していって実っていき、当然毎年の気温は変動しています。コシヒカリよりも早く収穫される酒造好適米は、作業スケジュールやタイミングを見計らうのが難しく、同時に収穫となると厳しい状況に陥ってしまうのです。特に重要なのは、コシヒカリを含め飯米と酒造好適米が混ざらないようにすること。そのため、コンバインから乾燥機、米粒の検査用の網までを酒造好適米専用にして、最初から最後まで徹底した環境で作業が行われているのです。そんな苦労が多くとも五郎兵衛地域で栽培するのは、やはり良い米になるから。特に作土層の下、もともとある地層が青色の重粘土で、瓦や焼き物に使うほどの粘土質な土壌が良い米に育ててくれます。「酒造好適米に関しては他で作っていないので比べることは出来ませんが、コシヒカリは他の土壌と五郎兵衛の土壌では食味の数値が明らかに違います。きっと酒造好適米も良い出来であると思っています」と和則さん。酒造好適米を栽培するようになってから土壌と米のデータを蓄積してきたため、それによって年々品質が良くなっていると確信があり、だからこそ自信を持って栽培しているのです。

1等米へのこだわり

「自分の水田では1等米を生産するのが当然です。それ以外は考えられません」と和則さんは誇りをもって語ります。和則さんは経営者としてだけでなく、実際に水田に入って作業することも多くあります。「生産物は現場で生まれるもの。それによって収益を得ています。だからこそ、基本的なことを徹底する必要があります」と和則さんは述べ、作物の状態を日々確認し、現場の声を大切にしています。佐久市中込に蔵を構える土屋酒造は、そんな和則さんを信頼し、2000年から酒造好適米であるひとごこちと金紋錦を無農薬栽培で依頼してきました。酒造好適米で1等というのも珍しい上に無農薬で1等のクオリティで育てることは他に類を見ないほどなのです。しかし2002年、病気のため2等米が出てしまいました。「一度病気が出てしまうと土壌に滞在してしまって、次年度も病気が広がってしまう可能性があります。そうなると等級外が出る可能性もあり、収量が取れず酒蔵にも迷惑がかかってしまいます」と、現在は致し方なく無農薬を外し、酒蔵の必要な量とクオリティを確保していますが、今後また無農薬での1等米を目指し栽培していくのではないでしょうか。こだわりの栽培と品質に惚れ込んだ土屋酒造6代目蔵元、土屋聡さんは今年度から量を増やすよう依頼しています。土屋酒造が醸す『茜さす』シリーズ全てが、この五郎兵衛地区の米だからです。「本来はコシヒカリを作っている方が良い。でも土屋さんの熱い思いに打たれました。こうした要望があれば応えていきたいし、継続していきたい」。和則さんと土屋酒造との間に、信頼と向上心に満ちた関係が築かれているのを感じます。

未来への展望:「茜さす」シリーズ

農業の高齢化や後継者問題は深刻な課題とされています。ファーム中鶴では、研修生の受け入れや繁忙期のアルバイト雇用に力を入れています。「面白かった」「また次も」という人から、辛くてすぐに辞めてしまう人と様々。次世代となる10代、20代がより多く農業に参加することを望む一方で、現実には容易なことではありません。このため、和則さんは同じ志を持つ仲間たちと団体を結成しました。例えば、隣接する水田でも異なる管理者がいることは珍しくありません。基本的に他の水田に手を入れることはありませんが、人手が足りないのであれば同じ工程の場合、近い水田も一緒に作業することで効率化を図れるなど、合理的なアプローチを提案しています。お互いに情報を開示共有し、公平公正な水田管理を行うことで、地区全体の維持に貢献したいとの考えがあるからです。それほどこの五郎兵衛地区は重要であり、五郎兵衛用水と地区の存続は非常に重要な使命と捉えています。「過去の人々がしっかり守ってくれたからこそ今がある。自分も10年、20年先を見据えながら繋げていきたい」と五郎兵衛用水と地区の存続に力を尽くすと決意を固めています。

そして、この地で育った「ひとごこち」と「金紋錦」を全量使用し日本酒に仕上げるのは土屋酒造。いち早く出荷される『茜さすヌヴォー 純米吟醸 無濾過生』は生酒らしい青っぽさで若々しくフレッシュ感満載、綺麗な甘みにうま味が重なる『茜さす 純米吟醸』、『茜さす 純米大吟醸』は滑らかな口当たりと上品な甘さの余韻が美しい味わい。これら『茜さす』シリーズはすべて、五郎兵衛地区で育てられた酒造好適米で作られ、その品質と地域的、歴史的な意義が織り交ぜられています。和則さんと同様に、『茜さす』も五郎兵衛地区存続の責任を担っているといっても過言ではないでしょう。和則さんと土屋酒造の熱意ある取り組みによって、未来に向けた展望が広がっています。

茜さす

五郎兵衛新田の金紋錦とひとごこちで醸されるのが、「茜さす」シリーズ。「茜さすヌヴォー 純米吟醸 無濾過生」は生酒らしい青っぽさで若々しくフレッシュ感満載。綺麗な甘みにうま味が重なる「茜さす 純米吟醸」、「茜さす 純米大吟醸」は滑らかな口当たりと上品な甘さの余韻が美しい味わい。

株式会社土屋酒造店

Tsuchiya Sake Brewery
人々の想いを醸す蔵

「喜びの宴に供されたい」と願い、まことにおめでたいの意「亀壽福海」より酒名を「亀の海」とし百有余年、歴史ある木造蔵で芳醇な酒を醸す。以前より品質に対するこだわりは、長野県下先駆けて吟醸酒の市販化や、全麹による無添加の甘酒の製造で表現してきた。さらに近年では佐久市・浅科五郎兵衛新田での農薬に頼らない酒米で醸す酒にもチャレンジ。地域の人々と共に歩む「人々の想いを醸す蔵」。

長野県佐久市中込1914-2
TEL:0267-62-0113
蔵見学:一部可(要予約)

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